てんこうこう、と読む。
命名の背景を聞きたくなる名前だ。
今日の「筆洗」が、その天光光にふれている。
自分を愛することは、実は難しい。しかし、そのためのとても簡単な方法がある。それは自分の名前を好きになること。そう説いたのは、わが国初の女性衆院議員となり、園田直・元外相の妻としても存在感を示した園田天光光さんである▼天光光。思わず由来を聞きたくなる名前だが、幼いころ光を一つ省き「天光」と書いたら、父に叱られたという。天は宇宙、光は宇宙創造の光、もう一つの光は「世の中の光となってくれ」という親の願い。だから名前は、その願いまでしっかり書くようにと(『女は胆力』)▼同世代の命を奪った戦争がようやく終わった時、園田さんは生き延びた喜びよりも、自分が「生き残された」ことに悩んだという。焼け野原の東京を歩けば、餓死者のむくろが放置され、飢えきった人々がいるのを目にした▼生き延びた自分たちこそは、平和な社会をつくらなくてはならないのに、飢死などしていいものか。それでは死んでいった者に申し訳ない。「天光光」と名付けた父に背中を押され、そう街で訴え、市民が力を合わせ食料を調達する運動を始めたのが、政治への第一歩だった▼園田さん逝去の報が載ったきのうの朝刊一面の「平和の俳句」は、梅田昌孝さん(61)の〈枇杷(びわ)の花戦後生まれのままで死ぬ〉▼生き延びた人間の責務として「戦後」を築いてきた一人の女性への追悼の句ともなった。「自分の名前を好きになる」ことの効果は、名前インタビューでもしばしば出てきた話題だったが、ここまで言い切った人はいなかった。『女は胆力』(平凡社新書の文庫版)を読もう。
◆
今朝の東京新聞1面
「2030年度の電源構成案 原発20%に上昇も」経済産業省の長期エネルギー需給見通し小委員会
「ODA新方針 他国軍の援助可能に」自民党総務会了承
「奥平康弘氏死去」憲法を活かせ