2015/11/23

「人々を排除しない参加型デザインへ!」

落ち葉舞う上野公園。
とびらプロジェクト 第4回オープンレクチャー「人々を排除しない参加型デザインへ!」へ現実逃避。
冒頭は、ジュリア・カセムさんの報告。
題は「インクルーシブミュージアム - 幅広い人々の関わりをデザインする」。ExtremeがわかればMainstreamがわかる。

報告では、いろいろな人のいろいろな試みが紹介された。
  • 子供たちにカメラを渡し、好きなものを撮影してもらう。それらの写真に本人と相手が別々にキャプションを付ける。もう一つの見方を知る機会。
  • 同じ家系の素足が並んだ写真。遺伝的に近くてもこんなに多様!
  • 処方箋の代わりに、ミュージアムのチケットをあげる。
  • Museum of Broken Relationship(クロアチアに行ったらぜひ!とのおすすめ)。誰にもある「別れ」がテーマ。ストーリーがいい。
  • Imperial War Museumは、銃の代わりに双眼鏡を置いている。銃で敵を狙う代わりに、双眼鏡で遠くに貼ってある小さなキャプションを見る。
ミュージアムを都市のどこに置くかも大事だ。それで思い出したのが、京都市立芸術大学の移転先。そして、磯崎新アトリエが設計したロサンゼルス現代美術館の建設場所。
別の話だったが、「よく読む雑誌と新聞を聞けば十分!」は「目から鱗」。でも、いまの若い人には何を聞けば、その代わりになるのだろう。

パネルディスカッションでは、娘さんのライラ・カセムさんも発表。彼女は「綾瀬ひまわり園活動している。二番めに話した松下計さんが紹介してくれたT-shapedはいろいろ使えそう。



2015/11/21

「仕切りなし」も「塀あり橋あり」も

ORF2015加藤さんのブースを訪問。フィールドワーク展に行けそうもなく、早めの研究室訪問。大道芸人やストリートミュージシャン、移動販売の屋台など、移動を前提とする活動のフィールドワークから、場づくりとコミュニケーションのあり方を問う、がテーマ。全国各地に出かけている。

脇の展示が気になって、チラチラ見ていたら、学生から「説明しましょうか」と声がかかった。別の研究室だった。仕切りらしきものがなく、いつの間にか石川さんのブースhajime.labに入っていた。

石川研の発表はキャンパス再発見がテーマ。構内を古地図や洋画で再現してみたり、色数に注目したポップアップを作ったり。GPSデータを加工したキャンパスマップがおもしろかった。こんな風に加工できるならGPSを持ち歩いてもいいと思う。加藤さんも、むかしGPSを小包に入れて、相手に届くまでのを可視化したりしていた。

いいなあと思ったのが、ORFのパンフレット。「次世代の芽」と題した冊子の表4に、クローバーを形どったシードペーパーが付いている。なるほど。どんな芽が出るのか。

六本木界隈をいくつか回ってから小平へ。「武蔵美×朝鮮大「突然、目の前がひらけて」」展だ。

塀を取り払うのではなく橋を架ける。違うから架ける。この発想に共感して、橋を渡りに行った。橋だからどちらからでも渡れるのだろうと思って、朝鮮大学校に行ったら、ムサビに行くように言われた。一停留所分歩いてムサビへ。

橋自体は渡りやすく作られていた。だが橋は橋でも、ムサビ側から渡って、ふたたびムサビに戻ってくるUターン型で、(ボクにとっては)行き交う橋ではなかった。それなりの事情があるのだろう。でも、ないよりははるかにいい。

2015/11/17

道の先が道とは限らない

いつも通る道の途中で右折した。
ここから先は、11年通っていて初めて通る道。
ふだんの道より一段高い。崖の上の道。
どんな世界が広がっているのだろう。
のぼりきると、道の両脇はちょっと凝った家々が並んでいる。
ながめながら、しばらく進むと、こんな標識に出くわした。

「この先、階段のため車両通行できません」

見ると、標識の先は長く急な階段。その分、見晴らしはいい。ジャンプ台のようだ。ダイビングした車もありそうな雰囲気が漂う。

2015/11/16

「半」

 社会性をもたない経済、社会性を持たない労働、社会性を持たない個人の誕生は人間たちに何をもたらしたのか。 
 私たちの社会では、必要だから生まれたものはそれほど多くない。多くのものは、それぞれの論理でつくりだされただけである。ところがそれが生まれてしまうと、そのことに適応した社会構造が生まれ、それなしには不便と感じる社会が発生してしまう。 
 社会のあり方と経済が一体化していない以上、つまり経済が経済独自の論理で展開している以上、経済は根源的な社会性を保持していない。 
 にもかかわらず、そのシステムの中で人は働いている。だからその労働は、根本的には社会性をもってはいない。 
 近代的な世界がつくりだしたバラバラな論理は、経済や労働を虚しいものにしてしまったのだと思う。 
 課題はどこにあるのだろうか。それは、経済が経済以外のものと結びついて展開するかたちを見つけだすことだろう。
 内山節さんたちは、それを「市場経済」として提示する。
 「」は大事なところを突いている。
 今川民雄さんは新刊『人とのつながりとこころ』の冒頭で、井上忠司さんの『「世間体」の構造』にふれ、ケータイで「世間」が潰されていったと書いている。世間とは「うち」と「そと」の中間(半うち、半そと)。いわば「半」の危機を感じている。
 「半」は、中間、あいだ、境目、中規模、中ぐらいを意味する。緩衝剤のようなものである。「半」のない状態は対立や衝突をもたらし、先に進めない。
 

2015/11/14

卒論の書き方13:彼/彼女

ときどき、He/Sheの流用で、「彼や彼女」とか、「彼らないし彼女ら」(英語ではどちらもThey)という表現を見かける。気にならないだろうか(英語でも気になる)。

性を意識(プライミング)させたいのであれば別だが、そうでなければ性以外のカテゴリーを使う。人々でもいいし、若者でもいい。学生でもいいし、市民でもいい。

「彼」が男性をイメージさせるのであれば「かれら」と書くとか。



パソコン上の辞書には、「彼」は「明治期まで男にも女にも用いた」とある。その後の経緯が気になる。

2019年7月14日改訂

2015/11/12

システムの破綻

いまや日常的風景になってしまった、トラブルによる電車の遅延。

ある駅の発車案内。といっても、どこの駅も変わらない。

ただいま10時13分。しかし10時4分の武蔵小金井行きはまだ来ていない。いつ来るのか。

いったん遅れてしまったら、時刻表を再現しただけの静態情報(絶対表示)はお手上げだ。遅れている場合、たとえば「5分遅れています」と出ることもある。しかし、その場合、本来の時間が表示されないので、何時に来るのかはわからずじまい。

これが気になったのは、台湾に行ったとき、台北市内のMRT(台北都市鉄道)の発車情報が相対表示、つまり電車が来るまでの時間表示(カウントダウン方式)になっていたからだ(undoさんのブログに写真がある)。

ベルリンの電車もそうだったような気がする。これであれば、時計も見る必要がないし、いつ来るのかも直感で分かる。

利用者としては相対表示(動態情報)の方がありがたい。その分、システムは複雑になるのだろう。

2015/11/11

買いたいのに……

暗い道。
自動販売機の前で、80すぎぐらいの女性が立ちすくんでいるように見えた。そのまま通りすぎても動かない。気になって引き返すと、130円のお茶を指差して、これを買いたいのだと言う。握りこぶしの中を見せてもらうと、ちょうど、その金額がある。お金が足りないわけではない。
1枚ずつコインを代わりに投入し、ボタンを押してもらった。ギリギリで手が届いた。手が届かなかったわけでもない。
結局、彼女は投入口がわからなかったようだ。確かに、暗い場所では投入口がどこなのかわからない。そのあたりがすべてメタリックで一様な色をしている。

2015/11/10

あいさつで終わらなかった

週末からずっと雨かどんよりの日が続いている。

エレベータの中での会話も天気の話題になる。

乗り合わせた同僚に「あいかわらず照ってくれないですね」とあいさつしたら、「そうなんだよ。昨年にくらべて、2割も晴れの日が少ない」。なぜ、そんなに正確にわかるのか、聞こうとしたら、こんなことばが返ってきた。

「2011年のあの事故の後で、ソーラーパネルを導入したんだよ。おこづかいを稼ごうと思ってね。最初は2万とか3万とかで買ってもらえて、よかったんだけど。今年はダメ」。

数字が出てきた理由がわかった。

単なるあいさつのつもりが思わぬ展開をした。

見られていた

そこを曲がると、職場の正門が前方に見える。あとは直進するだけ。
その角をまがるところで、目の前で「こんにちは」と声をかけられた。
いっしゅんビックリ。
会うといつもニコニコしながら挨拶してくれる人だった。構内清掃をしてくれている人だ。
なぜ、すぐにボクとわかったのだろう。と、怪訝な顔をしたのだろう。
その人は脇に立っているカーブミラーを指差した。そこに、坂を上ってくる私が映っていたのだ。

2015/11/09

崖の上と下

帰りの飛行機で、平井玄さんの『ぐにゃり東京』。
副題がアンダークラスの漂流地図。
芳賀さんから指南いただいた視線(=「崖」は社会の崖、人生の崖)でも読める。
崖の上と下とでは、こんなにも世界が違ってきてしまっている。距離にしたら、たいしたことないのに。

2015/11/08

研究者の誠実

 ある本の合評会で報告をすることになり、まず浮かんだのが「ハビトゥス」という概念だった。

 佐藤先生の存命中に参加した科研費プロジェクト「情報化と大衆文化」で、『ディスタンクシオン』を知り、同時にブルデューという名前も知った。彼のアイデアは、自分の趣味を振り返っても腑に落ちることばかりだった。当時は、彼を単なるエリートとしか思わなかったが、加藤晴久の近刊『ブルデュー 闘う知識人』を読んで、自身の人生がいかに研究にかかわっていたかを知った。

 「序」でこんなエピソードが出てくる。

 東大での講演後、ひとりの学生が、ブルデューにぜひ聞いてもらいたいことがあると、通訳を務めた加藤さんに近寄ってきた。

 制度としての学校が、恵まれた階級の文化的遺産を伝達することによって、不平等を永続化する機能を果たすことはよくわかった。ならば、東大生である自分は何をしたらいいのか。

 自分で見出すべき問いではないかと思いつつも、加藤さんは質問を伝えた。ブルデューは遠くを見るような目をして考えたあと、こう答えた。

 「もし自分があなたの年齢で、こういう答えを聞かされたら、きっとがっかりするであろうと思う。しかし、わたしは社会学の仕事をやることによって救われた。社会的拘束を乗り越えることができたと思う」。

 終章「若い読者のために」は、若くない読者をも鼓舞する。

 これからの寒さに対する暖房具のような本だ。読後があたたかい。
終章では、「国際社会学会による(今世紀における)重要書アンケートの結果」(1997年実施)が紹介されている。『ディスタンクシオン』も入っている。いま調査すれば、『国家貴族』も「世紀の10冊」に入るだろうと加藤さんは言う。

2015/11/05

Street people

ホームレスの人を20年以上にわたって撮影してきた写真家、高松英昭さん。

意外にも「路上は社会のシェルターであり、失われた人間関係を回復させる場所だと気づきました」という。

人がホームレスになるのは、住む家やお金がなくなった時ではなく、社会や頼れる人間関係を失った時だとも。つまり彼らが必要としているのは、経済的支援だけではなく、当たり前の人間関係を築くことなのだと。

「支援する側の発想は、まず路上生活から脱しましょうというものがほとんどです。でも路上からの脱出を急ぐあまり、人間関係は置き去りにされることもある。僕たちは支援する、されるという一方的関係を越えて、立場の違う人たちと、どういう人間関係を築いていくのか。そのヒントは路上にあるのではないかと思います」。

ビッグイシュー日本版」No.274から。

2015/11/04

Backlight

中央線車内
目の前に女子高生が3人すわっている
それぞれもくもくとスマホにむかっている
背後から日がさし、床に3人の影ができている
それに気づいた一人が影絵をはじめた
それに気づいた二人も影絵をはじめた
影絵と言ってもたんじゅん
グーチョキパー
もくもくが表情にかわった

2015/11/03

『詩ふたつ』

長田弘著。
クリムトの絵を前に書かれたらしい。

書名について、あとがきにこうある。

詩は死、詩は志。
ふたつはことばと絵、ふたつは線二つの人。

「亡くなった人が後に遺してゆくのは、その人の生きられなかった時間であり、その死者の生きられなかった時間を、ここに在るじぶんがこうしていま生きているのだという、不思議にありありとした感覚」。

詩ふたつ』は亡き妻、瑞枝さんに捧げられた詩集。

亡くなってすぐには読めない詩ふたつだ。

たまたま「七草」

2015/11/02

初めて耳にした

エレベータに大勢乗り込んで来た。
その途端、こんな音声が流れて来た。
「たいへん混雑しております。しばらくの間ご辛抱ください」。
初めて聞く。
調べると、少なくとも10年前から流れているらしい。
いるのかなあ、と思う。

2015/11/01

「松隈洋の近代建築・課外授業」

住む。』の連載
  1. 神奈川県立近代美術館坂倉準三設計、特別展が2016年1月末まで、2016年3月末閉館)
  2. 神奈川県立図書館・音楽堂前川國男が初めて設計した公共施設)
  3. 八幡浜市立日土小学校松村正恒氏の設計によるモダニズム木造建築)
  4. 日野市立中央図書館(東経大図書館を設計した鬼頭梓の設計)
  5. 八王子セミナー・ハウス吉阪隆正設計)
  6. 法政大学55・58年館大江宏の設計、2019年4月~2021年1月、解体工事)
  7. 三里塚教会吉村順三の設計)
  8. 国立競技場片山光生設計、2014年5月閉鎖)
  9. 広島平和記念資料館丹下健三設計)
  10. 世界平和記念聖堂村野藤吾設計によるRC造、三廊式バシリカの教会堂)
  11. ホテル・オークラ谷口吉郎:ロビー、オーキッドルームほか、小坂秀雄:外観、2015年8月本館閉鎖)
  12. 藤村記念堂谷口吉郎博士設計)
  13. つづく
 今すぐ重要文化財にしたい!モダニズム建築ベストリスト


フルネームで呼んでくれてありがとう

スティールの『 ステレオタイプの科学 』に、こんなエピソードが紹介されている。  ある伝説の英雄と同姓同名の人物に出会ったことで、研究上の疑問が解けたという話である。  シャーマン・ジェームズは、人種による健康格差の問題に取り組む公衆衛生研究者である。たとえば、アメリカの黒人は白...